腎陰虚とKidney yin deficiency pattern’

冬は腎の季節です。今年はのぼせ午後の熱感、微熱感、手のひらや足のうらのホテリ(五心煩熱)など腎陰虚の症状が出てもおかしくないです。世界保健機構(WHO)のICD-11では、‘Kidney yin deficiency pattern’とされています。

腎は五行の水です。腎陰は全身の陰のもとです。
陰液が不足すると、口渇やノドの渇きが出やすいです。また、肌は乾燥します。

陰液(水)が不足すると、相対的に陽気が余って虚熱となり、上昇します。

頬が赤くなります(颧红)。

陰の時間である午後になると陰が不足して、潮が満ちるように微熱が出ます(潮熱)。

眩暈が出やすいです。

腎は耳に開竅するので耳鳴も出やすいです。

てのひらと足の裏と胸部に熱がこもってイライラします(五心煩熱)。

女性の場合、閉経も起こります。熱があるので紅舌で陰液が少ないため少苔です。典型的なのは、西洋医学の更年期症候群です。

弁証は腎陰虚、治則は滋補腎陰です。

漢方では六味地黄丸が代表方剤です。六味地黄丸の三補三瀉の考え方は鍼灸にも応用できます。腎は増えませんが、腎に重荷がある場合、その重荷を降ろせば機能は改善します。それが三瀉で、沢潟・伏苓・牡丹皮で瀉熱と利水します。その上で熟地黄・山薬・山茱萸で三補します。つまり、虚熱を瀉熱するのと利水することが重要だと思います。

食べ物で、理論的に滋補腎陰する食材の代表はスッポン、黒胡麻、豚肉、蟹肉などです。

以下は、清代、王士雄著、『随食居飲食譜』の鼈(すっぽん)です。
以下、引用。

(スッポンは)甘味、平性で、肝腎の陰を滋(うるお)し、虚労の熱を清熱する。脱肛や崩漏・帯下・瘰癧を治療する。

李時珍は『本草綱目』の水亀甲(水龟甲)において、以下のように論じています。

亀と鹿は霊験あらたかで寿命が長く、亀の首は常に腹に向いており、任脈を通じさせる。亀甲は心を補い、腎を補い、血を補い、みな養陰する。鹿の鼻は常に尾っぽを向いて、督脈をよく通じさせる。それで鹿角は命門、精、気など補陽する。

教科書的には、腎陰虚には足少陰腎経の補法で、原穴の太溪や母穴の復溜が標準的です。

しかし、食べ物だけで考えると、正直に言って補腎のスッポンばっかり食べて腎陰虚が治るかと言われると、違う気がします。むしろ、酸味のレモンウォーターや柑橘系で理気瀉熱したほうが本人は楽だと思います。

ナシや柿の生津と、アヒル肉(鴨肉)やナマコ(海参)の滋陰は同じ補陰でも体への作用が違います。

滋陰の生薬の代表は、ロバの皮を煮たらできるゼラチンである阿膠(あきょう)魚の煮こごりゼラチンである魚膠(ぎょきょう)などです。滋陰はネットリしています。補腎や補血の生薬と重なることが多いです。

梨や柿の生津はサラサラしています。腎陰虚には、補肺陰・生津する梨や柿のほうが良いのではないでしょうか。または、酸味のレモンや柑橘系で肝熱をとったり、苦味で心熱をとったり、胃熱をとるほうが望ましい感覚があります。

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