腰痛とプレガバリンの歴史

2014年12月19日イロリオ
「一般的に処方される腰痛の薬に効果がないことが判明」
http://irorio.jp/utopia/20141220/189456/

以下、引用。

慢性的な腰痛の治療薬として世界中で処方されているプレガバリン。リリカという名前で日本でも使用されている薬だが、この薬には腰痛の症状を和らげる効果がないことが明らかになった。

【プラシーボ効果と大差なし】
米ロチェスター大学のJohn Markman博士らによって行われた研究によると、プレガバリンは世界中で腰痛の治療薬として一般的に処方されているものの、実際に痛みを和らげる効果としてはプラシーボ効果による治療と大差がないという。

原著論文は、『アメリカ神経学学会(AAN:American Academy of Neurology)』の
学術雑誌『神経学(Neurology )』
「神経因性跛行へのプレガバリンのダブル・ブラインド・ランダム化比較クロスオーバー試験」
Double-blind, randomized, controlled, crossover trial of pregabalin for neurogenic claudication
John D. Markman, MD et al.
Neurology
December 10, 2014

【結論】
プレガバリン(リリカ)は脊柱管狭窄症における神経因性跛行の患者の機能や痛みの症状を減らす事についてプラセボ以上の効果がない。

2017年10月17日『メディカルトリビューン』
「ガバペンチノイドは疼痛万能薬にあらず」
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2017/1017511194/

以下、引用。

【研究の背景:学術的根拠ない「適応外処方」が蔓延】

ガバペンチノイド〔ガバペンチン(商品名ガバペン)、プレガバリン(同リリカ)〕は、α2δリガンドと呼ばれる薬剤のグループに属し、神経伝達経路の電位依存性Caチャネルであるα2δサブユニットとの結合を介して同経路を抑制するのが作用機序とされている。米国で開発された薬剤で、当初は抗てんかん薬であったが最近、米食品医薬品局(FDA)が帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛、糖尿病性神経痛、線維筋痛症に限定した鎮痛薬として追加適応を承認している。

ところが、日本の整形外科の医療現場ではガバペンチノイド、特にプレガバリンは慢性腰痛、坐骨神経痛、神経根性疼痛など、さまざまな一般的疼痛に対して広く使われている。そこにはなんの学術的根拠もない。

今回紹介する論文は、慢性腰痛に対するガバペンチノイドの効果を示した系統的レビューおよびメタ解析であり(※:PLoS Med 2017;14:e1002369)、日本で蔓延する適応外処方に警鐘を鳴らすものである。

研究者らは「ガバペンチン、およびプレガバリンは慢性腰痛患者に処方すべきではない」と結論している。ラットでの神経の結紮はヒトにおける神経の損傷のモデルとはならないことが示されている。

一方、前記2疾患の他にも腰痛、坐骨神経痛、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアによる神経根性の疼痛、関節症の疼痛など、一般的な整形外科疾患の疼痛にプレガバリンが有効であることを示した報告は私の知る限り皆無である。

この論考を脱稿後に、ガバペンチノイドの適応外使用の問題に関して重大な情報を入手した。米国でも承認された適応症を逸脱した処方が広く行われていることをN Engl J Med(2017;377:411-414)が誌説で批判したのだ。適応外処方の代表的疾患として腰痛と変形性関節症による痛みを挙げており、その背景にプレガバリンの販売メーカーによる過度のプロモーション活動があることを指摘している。

2017年8月15日「慢性腰痛へのガバペンチノイドの効果と安全性:ランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシス」
Benefits and safety of gabapentinoids in chronic low back pain: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
Shanthanna H et al.
PLoS Med. 2017 Aug 15;14(8):e1002369. doi: 10.1371/journal.pmed.1002369.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28809936

2019年6月26日『メディカルトリビューン』
「プレガバリンで自殺行動リスクが上昇 スウェーデン・19万人超の検討」
https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0626520558/

以下、引用。

プレガバリン服用により自殺行動や偶発的過量服用などのリスクが上昇することが明らかになった。日本ではてんかんや神経障害性疼痛などに適応を持つガバペンチノイド(ガバペンチンまたはプレガバリン)を処方された15歳以上のスウェーデン人、19万人超のデータを検討した結果を英・University of Oxford/スウェーデン・Karolinska InstitutetのYasmina Molero氏らがBMJ(2019; 365: l2147)に発表した。また年齢別に見ると、特に15~24歳の若年者でリスクの上昇が顕著であることもわかった。

2019年6月12日『英国医師会雑誌(BMJ)』
Associations between gabapentinoids and suicidal behaviour, unintentional overdoses, injuries, road traffic incidents, and violent crime: population based cohort study in Sweden
BMJ 2019; 365 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l2147 (Published 12 June 2019)
Cite this as: BMJ 2019;365:l2147
https://www.bmj.com/content/365/bmj.l2147

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