体質と鍼の感受性

2014年「朝鮮族伝統医学の四象体質の針刺感受性研究」
朝医四象体质的针刺感应研究
朴海仙 柳今明 张雪 金春玉
《中国民族医药杂志》 2014年12期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZMYZ201412022.htm
http://ir.nsfc.gov.cn/paperDownload/1000013613659.pdf
(オープンアクセスPDFファイル)


中国、吉林省、延辺大学中医学院の研究者による論文です。吉林省には120万人の朝鮮族が住んでいます。延辺朝鮮族自治区にある延辺大学は中国の朝鮮族の教育のために建てられた大学であり、校舎は日本の関東軍の憲兵司令部のあった場所です。

以下、引用。

【結果】(四象医学の)太陰人の足三里(ST36)の針刺による感覚の伝導は少陽人よりも感受性が低い。少陰人の合谷は少陽人よりも鍼の感覚がない。左右の足三里(ST36)と合谷(LI4)への鍼でも2名の太陰人は鍼感を感じなかった。

【結論】過熱体質の少陽人の針刺感覚は「気が渋る体質の太陰人や「過冷」体質の少陰人よりも感受性が強く、針刺の感受性と体質は経絡ー内臓の間の密接な相関性を証明している。

四象医学の太陰人は他の体質と比較して鍼の響きや得気感が出にくいという結果は興味深いです。鍼の響きの感受性というのは体質であり、変わらないと感じます。遠隔治療や接触鍼をしていると、こちらが驚くほど鍼の響きに敏感な「経絡敏感人」タイプもいれば、逆にまったく鈍感なタイプもいます。

パルス鍼に至っては顕著で、通電は絶対に受け入れられない超敏感体質もいれば、パルス鍼のボリュームをかなり上げても大丈夫なタイプに大別されます。

中医学の「喜按」は虚証、「拒按」は実証という大まかな分類はありますが、虚証の超敏感タイプの虚証が改善されても、べつにパルス鍼や大鍼・長鍼が平気になるわけではないです。
だから、鍼や刺激への感受性は治療で変わらずに一生不変であることも多いので、体質だと思います。鍼灸師にとっては鍼や灸への刺激の感受性が臨床では大きいので、感受性と体質分類の情報は貴重です。

以下、引用。

四象医学は太陰人は「肝大で肺小」「血が濁り気が渋る」臓器の特徴があると考えている。肺虚で燥が過剰という体質特徴があり、少陽人の脾大で腎小で陽気過剰で陰損、腎虚過熱という特徴と対照的である。以上の研究報告は、得気と神経ー筋肉ー血管の関係を証明しており、今回の結果は少陽人の過熱体質では太陰人の気渋る体質よりも得気の伝導感覚は強くなるということである。

少陰人には腎大脾小と血奪気敗の臓器の特徴があり、脾虚で過冷の体質特徴がある。

上記は、韓国伝統医学の四象医学の 太陽人・少陽人・太陰人・少陰人という四象体質分類であり、 WHO-ICD11にも収録されています。1894年に李済馬先生が『東医寿世保元』で提唱しました。 太陽人・少陽人・太陰人・少陰人という四象体質がせっかく WHO-ICD11に収録されたので、この機会に東洋医学の体質学を検証したいところですが、あまり、そのような動向がないのが残念です。

下記の論文はわかりやすかったです。

「東洋医学の体質分類の思想である四象医学(Sasang Constitution Medicine)について」
具 然和
純真学園大学雑誌 5, 103-108, 2015
https://ci.nii.ac.jp/naid/40020905484
(全文無料オープンアクセス)

韓国の李炳幸先生は四象医学をもとにして『太極鍼法』を1967年に『鍼道源流重磨』 で発表されました。
http://www.akomnews.com/bbs/board.php…

太陽人 (肺大肝小): 太衝補 太淵瀉
太陰人 (肝大肺小): 太淵補 太衝瀉
少陽人 (脾大腎小): 太白瀉 太谿補
少陰人 (腎大脾小): 太白補 合谷瀉

晩年の 李炳幸先生の治療の様子を日本の木下晴都先生が記録されています(39ページ)。

木下 晴都 「韓国の鍼灸」『日本鍼灸治療学会誌』1972 年 21 巻 1 号 p. 37-40
https://www.jstage.jst.go.jp/…/…/1/21_1_37/_article/-char/ja

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