置鍼時間

2019年「留鍼(置鍼)時間の初歩的研究」
留针时间初探
黄馨云 李璟 顾侃 徐红 崔若琳 杨伟杰 应嘉炜 宗蕾 张仁
《中国针灸》 2019年04期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201904040.htm
http://tmbos.com/index/article/view/id/8960.html


「留鍼で適切な時間はどれくらいか?」は難問だと思います。


『黄帝内経素問』鍼解篇第五十四では以下の記述があります。


実を刺してその虚するをまって鍼を留め、陰気が隆して至ればすなわち鍼を去る。

虚を指してその実するをまって陽気が隆して至れば鍼下は熱しすなわち鍼を去る。

《黄帝内经·素问》针解篇第五十四
http://www.zysj.com.cn/lilunshuji/huangdisuwen/100-3-54.html

『鍼灸甲乙経』では留鍼時間が呼吸時間で表現されています。明代の『鍼灸大成』や汪機著、『鍼灸問対』では初めて呼吸時間から離れます。

現代では承淡安先生が単刺術や旋撚術とならべて置鍼を論じました。

以下、引用。

置鍼術は虚弱者や女性や鍼を畏れるものに活用され、鎮静効果があり、一般に5分から10分留置し、病状によっては1時間から2時間留置する。承淡安先生は臨床で病を治療する際には精密に選穴し、鍼は3穴から5穴でも多いくらいで、もし留鍼するにしても、毎穴を1分から2分捻鍼し、全体として留鍼時間はきわめて短かった。

現代日本でも中医派の先生は置鍼中に1分ほど順番に捻鍼する先生は多いと思います。

この論文は1970年代の中国でも鍼麻酔ブームで、電気鍼をすると鎮痛が誘導されるのに20-30分かかったのが現代の置鍼理論に影響していると指摘しています。

これは納得で、日本でも麻酔科医で帝王切開などを鍼麻酔していた兵藤正義先生も文献の中で針麻酔は最初は手技で始まり、1秒1回から2回の捻鍼をしていたところから鍼麻酔でも1Hzから2Hzになったことを書かれています。さらに、抜歯針麻酔などでも合谷(LI4)に捻鍼すれば即座に鍼麻酔がかかるのに、電気鍼をすると20-30分かかることを書かれていました。

さらに考えると、古代の鍼は鉄鍼や金鍼、銀鍼で太かったです。現在のような細く硬いステンレス鍼ではありません。わたしは銀鍼で学んだ最後の世代だと思うのですが、すぐに曲がり、折れて、怖くて置鍼なんて出来るものではありませんでした。現代中医学鍼灸のように多穴に置鍼というのは金鍼や銀鍼では出来ないです。

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