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【BOOK】『ナチス・ドイツの有機農業―「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』

 

 

『ナチス・ドイツの有機農業―「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』
藤原辰史
柏書房;2012年

 

 

ネットフリックスのヴィーガニズムのプロパガンダ映画『健康って何?』『カウスピラシー』『シースピラシー』をみていて最も気になったのは、ヴィーガンの方々が持っている反農業、反漁業の思想です。

わたしの実家は農協と漁協の両方に入っていたので、映画をみていて非常にツラかったです・・・。

特に『シースピラシー』で和歌山県・太地町のイルカ漁が取り上げられている部分は、「和歌山の漁師さん達は、そんな極悪人ではないです・・・」と思いながら見ていました。

『カウスピラシー』で畜産農家が諸悪の根源のように取り上げられているのにも違和感しかありませんでした。2013年の日本映画『ある精肉店の話』をヴィーガンのヒトたちに見せたくなりました。

私たちが他の生命を食べながら生きている事実を否定してしまう潔癖主義には、むしろ幼さや精神的未成熟さを感じてしまいます。

現在、世界中で反農業の思想が盛り上がっています。オランダでは環境保護派の政治家がマジョリティとなり、世界的農業大国であるオランダで畜産農家を廃業させる政策が決定され、オランダの農家はデモで大暴れしています。畜産農家こそが、境破壊をしているとオランダ政府は主張しているのです。

2022年8月4日『日経新聞』
「オランダ政府、畜産農家の廃業奨励 排出削減を優先」

世界中のヴィーガニズムを冷ややかに見ている知識人たちは、このオランダ政府の政策をグリーン・ウオッシング、エコ・ファシズムと批判しています。

 

そんな中で藤原辰史先生の『ナチス・ドイツの有機農業―「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』を読みました。

 

化学肥料は1912年にドイツ人のフリッツ・ハーバーが発明しました。
それに対して、ドイツのルドルフ・シュタイナーは世界初の有機農法、バイオ・ダイナミック農法を提唱します。

シュタイナーのオカルト思想の有機農法は、ナチス親衛隊のヒムラ―や食料大臣のリヒャルト・ヴァルター・ダレ、ルドルフ・ヘスなどに取り入れられます。

ルドルフ・ヘスは、アウシュヴィッツ収容所やダッハウ収容所で過酷な強制労働により、有機農法でハーブ薬草栽培をさせていました。

さらに動物虐待を法律で禁止し、ベジタリアンが多く、東洋思想やオカルティズムに傾倒していたのがナチス・ドイツの官僚たちです。

 

ナチス・ドイツの有機農法は、戦前の日本にも思想的影響を与えています。

2022年1月に日本のネトウヨの歴史的起源について調査したところ、日本で有機農法をしているディープ・エコロジーのグループから排外主義・外国人排斥主義を特徴として、ナチズムと親和性のある右翼思想が発生しているという歴史を知り、驚きました。

ナチス・ドイツの思想はディープ・エコロジーであり、人間中心主義ではなく、反人間中心主義と言えるものです。人間よりも自然を中心とする考え方でした。

現在、世界的に反農薬、反化学肥料で無農薬オーガニック有機農法を推奨し、動物虐待や肉食や畜産業・漁業を批判するエコ・ファシズムが、正義感が強く、潔癖で、善良な人たちの間で流行しつつあります。

『ナチス・ドイツの有機農業』を読むと、それはまさに1930年代のドイツで起こったことであることがわかります。

都市化され、優秀な官僚が疑似科学・オカルティズム・東洋思想にはまり、民間療法と反化学肥料の有機農法が結合して、ナチスドイツが生み出されていく歴史が描写されています。

東洋医学の業界は、これらの思想に親和性があるため、権威主義や全体主義の方向に行く同業者が多くみられると予測できます。

せめて歴史を知り、同じ過ちを繰り返さないようにと思います。

 

 

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