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【BOOK】『戦争とオカルティズム 現人神天皇と神憑り軍人』

 
藤巻 一保著
二見書房 (2023/3/27)

 
第1章 ユダヤ禍と竹内文献
第2章 古神道系団体の周辺
第3章 二・二六事件と天皇信仰
第4章 皇国史観の牢獄の中で
 
 
この本は面白かったです。
戦前の日本の「皇道派」に属する高級軍人たちが「日本人の祖先はユダヤ人だった」「キリストの墓は日本にあった」などのオカルト陰謀論にハマり、戦争を起こしていくことを描写していました。
 
最近は、ドイツでもナチスの高級官僚や軍人たちがオカルト学説・疑似科学・代替医療に傾倒し、強制収容所で無農薬の薬草ハーブを有機農法栽培させていた歴史が掘り起こされています。
 
司馬遼太郎『坂の上の雲』で戦略の天才として描写されている軍人・秋山真之の真の姿も描かれています。
 
秋山真之は霊術家・川面凡児の古神道に熱狂し、大本教に入信するスピリチュアルな人物であり、日露戦争でバルチック艦隊の進路を霊夢で予測して軍隊の戦術を決定するような人物でした。軍人として最低だと思います。しかし、戦前は陰謀論とオカルティズムにハマる人が軍隊の中にものすごく沢山いました。
 
鍼灸沢田流の沢田健先生は、1936年に竹内巨麿の天津教事件に関わって、特高警察に思想犯として不敬罪で逮捕されています。この本では、そのオカルト人脈が描かれています。
 
1918年に酒井勝軍がシベリア出兵に同行し、ユダヤ陰謀論『シオン賢者の議定書』を知ります。
 
1918年に軍人・安江仙弘がユダヤ陰謀論『シオン賢者の議定書』を翻訳します。
 
1924年に沢田健先生が雑司ヶ谷で開業されます。
 
1927年にジャーナリストの中山忠直が『漢方医学の新研究』を出版し、沢田健先生を紹介し、それを読んだ代田文誌が沢田健に入門し、『鍼灸真髄』となります。
 

 
1928年に竹内巨麿は『竹内文書』を公表し、天津教をつくります。日本ユダヤ同祖説やキリストの墓など、戦後のオカルトや右翼の大物、頭山満や東洋哲学者の安岡正篤、2.26事件の黒幕と言われた真崎甚三郎陸軍大将、日本への神智学・ヨガの紹介者である三浦関造など、戦後のオカルト陰謀論の人脈が、戦前の沢田健先生や中山忠直の周辺や、戦前のオカルト極右軍人の周辺に集まっていました。
 
1936年に沢田健先生は不敬罪で逮捕され、不起訴となったものの、失意から1937年にはガンを発病し、1938年には62歳で亡くなられました。
 
 
現代は極右思想と代替医療とオカルト陰謀論がむすびつく時代であり、その起源は戦前にあり、その歴史的ファクトを知る入り口としては良い文献だと思いました。
 
現在は、神社本庁など神道関係の団体は金銭スキャンダル・権力スキャンダルだらけで、極右思想との結びつきも強く、腐敗しきっています。戦前からの人脈や思想の流れを知れば、現代のカルト神道には近寄る気にはなれないのが普通の感覚だと思います。
 
 
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