2019年8月25日 韓国、尚志大学校
「線維筋痛症への真鍼と偽鍼の比較：システマティックレビューとメタアナリシス」
Comparing Verum and Sham Acupuncture in Fibromyalgia Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis
Jiwon Kim et al.Evid Based Complement Alternat Med. 2019; 2019: 8757685.
Published online 2019 Aug 25
以下、引用。
【結論】
真鍼は、偽鍼よりも疼痛緩和、睡眠の質の改善、線維筋痛症の後処理における一般的状態の改善に有効だった。
2022年11月の『米国医師会雑誌(JAMA)』の米国退役軍人省のエビデンス・マップでは「高い、または強い程度のエビデンスの確実性」で「効果あり」でした。
日本の『線維筋痛症診療ガイドライン 2017』でも同じような記載になります。
少し問題を感じるのは、線維筋痛症の鍼灸治療について、たとえば電気鍼は線維筋痛症に対して効果が高いという研究が存在するという知識などが初学者に教育されているかという部分だと思います。教育問題、情報の共有問題です。
知識の共有の問題です。
「線維筋痛症に鍼は効果がある」という知識は、日本線維筋痛症学会のガイドラインやコクランレビュー、アメリカ退役軍人省のエビデンスマップにも書いてある公共財であり、共有されることで初めて患者、鍼灸師、医師、医療従事者にメリットが生じます。
しかし、それを私的財としてコントロールすることで、情報の占有者には権力や権威というメリットが生じます。知識は共有することでコミュニティは豊かになります。
【線維筋痛症の研究史】
19世紀から広範囲の筋肉痛は報告されており、「筋肉リウマチ」「結合組織炎」「心因性リウマチ」と呼ばれていました。
1981年、モハメド・ユヌスが最初の科学的報告をしました。フィブロマイアルジア（線維筋痛症）のフィブラはラテン語の繊維（fiber）、マイオはギリシャ語の筋肉（muscle）、アルゴスはギリシャ語の痛み（pain）です。
1987年、JAMAに線維筋痛症候群の報告があり、この時代はFMSと呼ばれていました。1990年にアメリカ・リウマチ学会が最初の診断基準を発表しました。それで、日本にも2003年に厚生労働省に研究班が出来ました。
1992年のスイスのドルーズによる電気鍼の研究は画期的だと思います。
1992年「線維筋痛症における電気鍼:比較試験の結果」
Electroacupuncture in fibromyalgia: results of a controlled trial.
Deluze C et al.
BMJ. 1992 Nov 21;305(6864):1249-52.
2004年「線維筋痛症候群に対する鍼灸治療の効果 慢性的な全身疼痛を主訴とした4症例に対する鍼通電治療」
伊藤 和憲et al.
『日本東洋医学雑誌』 Vol. 55 (2004) No. 3 P 331-336
鍼では、2013年にコクラン・システマティックレビューが発表されます。
2013年コクランシステマティックレビュー
「線維筋痛症の鍼」
John C Deare et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2013 May 31;2013(5):CD007070.
鍼治療は、疼痛およびこわばりの緩和や総合的な健康状態および疲労の改善において、無鍼治療より効果がある可能性がある。電気刺激を伴う鍼治療は、鍼単独治療より疼痛、およびこわばりの緩和や総合的な健康状態、睡眠および疲労の改善において効果がある可能性がある。
2016年2月、『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル（英国医師会雑誌）』の『アキュパンクチャー・イン・メディスン』にスペインのヨルゲ・ヴァス医師による画期的論文が掲載されました。
2016年2月「線維筋痛症の鍼によるプライマリケア:ランダム化比較試験」
Jorge Vas et al.
Acupunct Med 2016 Feb 15
【結論】
個別化(弁証)された鍼治療は、線維筋痛症のプライマリ・ケアにおいて、プラセボ治療と比較して疼痛緩和の効果が証明された。その効果は1年持続し、副作用はマイルドで、あまり無かった。
2018年「線維筋痛症：中国伝統医学の診断に基づく選穴のグループ鍼」
Fibromyalgia: Group Acupuncture with Traditional Chinese Medicine Diagnosis-Based Point SelectionScott D Mist, PhD Kim Dupree Jones, PhD
Pain Medicine, Volume 19, Issue 9, 1 September 2018, Pages 1862–1871,
2019年8月25日 韓国、尚志大学校
「線維筋痛症への真鍼と偽鍼の比較：システマティックレビューとメタアナリシス」
Comparing Verum and Sham Acupuncture in Fibromyalgia Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis
Jiwon Kim et al.Evid Based Complement Alternat Med. 2019; 2019: 8757685.
Published online 2019 Aug 25
2021年6月22日『整形外科レビュー』
「線維筋痛症における鍼の効果」
Efficacy of acupuncture in the treatment of fibromyalgia
Amnon A. Berger et al.
Orthop Rev (Pavia). 2021 Jun 22;13(2):25085.
(全文オープンアクセス)
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