【BOOK】『中医臨床』通巻176号コモンディジーズの中医医療 不安・抑うつ

 
 
 
特集/コモンディジーズの中医治療 ―不安・抑うつ―
2024年3月20日発行
 
中医臨床 通巻176号(Vol.45 No.1)
 
 
もっとも面白かったのは、34ページから37ページの岡留美子先生の『解決志向ブリーフセラピーの活用ー不安・抑うつの事例を交えて』です。わずか4ページの岡留美子先生の文章のなかに臨床で役立つクリニカル・パールがちりばめられており、読んでいるだけで気づきがありました。
 
岡留美子先生は1979年東京大学文学部心理学科卒業、1987年大阪大学医学部卒業、1997年岡クリニック(奈良県生駒市)開業。2020年東洋学術出版社より『いのちのレジリエンス 漢方とブリーフセラピーを精神科治療に活かす』を出版されています。これは、ぜひ読もうと思います。
 
いのちのレジリエンス 漢方とブリーフセラピーを精神科治療に活かす
 
 
 
岡留美子先生は、精神科医として漢方とブリーフセラピーで臨床をされています。ブリーフセラピーは問題解決志向ブリーフセラピーであり、家族療法を出発点にして、家族療法と一線を画す効果的治療法となりました。
 
1980年代に、アメリカ・ミルウォーキー州にあるブリーフ・ファミリー・セラピー・センターで、韓国・梨花女子大学出身のインスー・キム・バークとその夫でジャズ・ミュージシャン出身だったスティーブ・シェイザーが創りました。スティーブ・シェイザーは、ミルウォーキー大学で美術の学士は取得していますが、心理学の訓練を受けていません。だからこそ、これだけ画期的でクリエイティブな心理療法を創れたのだと思います。
 
 
ブリーフセラピーでは、原因をさぐらず問題解決を開発します。これは心理療法のパラダイムシフトです。演繹推論ではなく帰納推論です。問題解決志向ブリーフセラピーを少し研究しただけで、ものすごく臨床に役立つヒントがあります。岡留美子先生の論文には書かれていませんが、問題解決志向ブリーフセラピーのEBMを調べました。
 
 
 
2018年テキサス大学
「医療現場における問題解決志向ブリーフセラピーの効果:ランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシス」
The effectiveness of strength-based, solution-focused brief therapy in medical settings: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
Anao Zhang et al.
J Behav Med. 2018 Apr;41(2):139-151.
 
結果として、問題解決志向ブリーフセラピーが心理社会的アウトカムに対する効果的な介入であり、医療現場における行動アウトカムに対する有望なアプローチであることを示した。
 
 
スティーブ・シェイザーとインスー・キム・バークは家族療法セッションを観察し、複数の異なる分野の専門家でディスカッションし、検討することで問題解決志向ブリーフセラピーを開発したそうです。この開発手法も凄いと思います。原因を探るのではなく、解決を志向するというアプローチは感動しました。 
 
 
目次
第1章 解決志向ブリーフセラピー
 解決志向ブリーフセラピーの成り立ち
  家族療法から生まれた心理療法/他の心理療法とどう違うのか/ダイレクトに「解決」を目指す
 解決志向ブリーフセラピーのエッセンス
  小話をひとつ―穴に落ちた男/解決像を知る/原因追究は必要ない/専門家が解決するのではない/困っている本人が解決の専門家/「無知」の姿勢の大切さ/変化は必ず起きる/リソース(資源)が必要/専門家の役割
 「原因」「問題」「解決」の関係
  原因が消えても問題は消えないことがある/直接解決を考える/問題の存続・消滅とは異なる次元にある解決/問題はわからなくても解決はある/障害はあっても充実した人生を過ごす/人間の知恵にみる解決方法
 解決志向ブリーフセラピーの進め方
  練り上げられたゴール/質問の活用
 
第2章 漢方医学と精神科医療
 日本の精神科疾患治療の歴史
  古代から中世―医療と宗教が未分化な時代/近世(江戸時代)―医療と宗教が分化した時代/近代以後―医学が担い、医師中心から多職種連携へ
 精神科と漢方は親和性がある
  石を撫でると病気が治る?/ミルトン・エリクソン顔負けの精神療法
 「心身一如」の医学
  「心身一如」の四つの側面/こころと体は分けて考えられない/こころと体は互いに反映し合う/こころが体を変化させる/体がこころを変化させる/漢方治療の「心身一如」/精神科治療と「心身一如」
 
第3章 精神科で漢方はどう役立つか
 漢方薬の効果と有用性
  漢方薬はこころと体の症状に同時に効く/抗うつ薬は体に作用する/漢方薬は「いのち」に作用する/漢方薬にも即効性がある
 服薬抵抗の軽減
  精神科の薬を嫌がる患者さん/病識のない患者さんへの対応/漢方薬への抵抗は少ない/漢方薬の活用で服薬抵抗をバイパスする
 精神科薬物の減量
  ベンゾジアゼピン系薬物の特徴/ベンゾジアゼピン以外の睡眠薬・抗不安薬/漢方薬の活用法
 西洋薬の副作用軽減
  消化器症状に効く漢方薬/錐体外路症状に効く漢方薬/抗コリン作用に効く漢方薬
 良好な治療関係の構築
  ジョイニングまたはペーシング/薬物治療を通じてのラポール形成/薬の「飲み心地」に注目する
 全人的医療として
  全人的医療とは/高齢者の具体的な例/漢方薬を効かせるには
 
第4章 精神科でよく使う漢方薬
 半夏厚朴湯
  気の滞りを改善する/患者さんにはこう説明する/パニック障害への応用/吐き気による不登校のケース
 柴胡加竜骨牡蛎湯
  ストレスが体の症状となって出るとき/私のビギナーズラック/希死念慮を改善する/息子の家庭内暴力でPTSDになったケース/円形脱毛症の中学生のケース
 四逆散
  ストレスがあっても表現できないとき/胸脇苦満と腹皮拘急/ナラティブ・ベイスト漢方/職場のストレスからうつ状態を呈したケース/双極性障害の男性会社員のケース
 抑肝散・抑肝散加陳皮半夏
  怒りがあるときの処方/うつ状態の高齢者のケース/パニック発作のケース
 甘麦大棗湯
  患者さんが教えてくれた棗の効果/悲しみ・抑うつ・不安が強いとき/不登校の中学生のケース
 桂枝加芍薬湯
  お腹の症状に効く/神田橋処方(桂枝加芍薬湯+四物湯)/ストレス性の下痢のケース/フラッシュバックと恐怖心があるケース
 
第5章 レジリエンスをどう引き出すか
 レジリエンスとは何か
  人はみなレジリエンスを持つ/治療が人を治すわけではない/言葉の力/レジリエンスの働きを邪魔しない
 解決志向からみたレジリエンス
  精神療法としての薬物療法/信頼と期待を呼び起こす/幼児のカウンセリングって?/解決志向ブリーフセラピーの原則/治療者と患者の関係性/関係性の変化とレジリエンス
 レジリエンスの作用点
  「こころ」という作用点/「体」という作用点/どの作用点に働きかけるか/健康生成論/ホメオスタシス/「いのち」という作用点
 レジリエンスを引き出すもの
  抑うつ+下痢症状のケース(解決志向)/更年期による痒みのケース(漢方治療)/期待と希望が果たす役割/回復を語るナラティブ/レジリエンスに働きかけ、回復を促進するもの
 
終章
  精神科治療の厳しい現実との出合い/ブリーフセラピーとの出合い/精神科での漢方活用/いのちのレジリエンス/穴に落ちた男の小話再考/おわりに
 
 

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