「月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)に対する鍼と漢方の治療効果」
Effects and treatment methods of acupuncture and herbal medicine for premenstrual syndrome/premenstrual dysphoric disorder: systematic review
Su Hee Jang et al. BMC Complement Altern Med. 2014; 14: 11.
Published online 2014 Jan 10. doi: 10.1186/1472-6882-14-11
以下、引用。
伝統的な鍼では身体的な徴候である頭痛、痛み、背中の痛み、冷や汗、ホットフラッシュ、乳房痛、皮膚疾患、手と足のむくみ、寒さ過敏、腹痛、そして腹部膨満は49.6%改善しました。
特殊な方法について調べると、手鍼で腹痛・腹部膨満は著明に減少し、ホットフラッシュも特に減少していました。
PMSという言葉は1950年代にイギリスではキャサリーナ・ダルトンという女医が『イギリス医師会雑誌』に論文を発表し、徹底的に研究しました。ダルトンさんは自分自身がひどいPMSだったので、PMSについてライフワークとして研究したのです。
ダルトンさんの治療法はクリエイティブで、PMSの女性がイライラした際にジャガイモやサツマイモを3時間おきに食べることです。
ダルトンさんはそれぞれの女性のPMSの症状が違うことから、個人ごとにきめこまかな治療をしました。ところが、イギリスの保健システムNHSは「費用がかかり過ぎる」とクレームをつけ、科学的根拠が薄いという理由でダルトンさんの治療法への保険適用をうちきりました。
ダルトン博士の記述は非常に臨床の参考に成ります。
『ワンス・ア・マンス―月経前症候群(PMS) 』
キャサリーナ ダルトン 時空出版 (1987/12)
『PMS法廷に行く―月経前症候群と女性の犯罪』
キャサリーナ ダルトン 誠信書房 (1998/04)
月経前症候群(PMS)は、中国語では「经前期紧张症」で、中医学の論文を読むと経行発熱(けいこうはつねつ)、経行身痛(けいこうしんつう)、経行浮腫(けいこうふしゅ)などの古典の記述がピックアップされています。
中国の山西中医学院の周洁先生は山西中医学院のPMS女子学生を調査し、以下の弁証結果を得ています。
肝郁脾虚证88例,约占33.72%;
肝郁化火证53例,约占20.31%;
肝气郁结证35例,约占13.41%;
脾肾阳虚证29例,约占11.11%;
气滞血瘀证28例,约占10.73%;
肝气逆证21例,约占8.05%;
肝肾阴虚证7例,约占2.68%。
「经前期综合征(PMS)的文献研究及山西中医学院女大学生PMS的证候调查研究」周洁 2016年『山西中医学院』
肝気鬱結(かんきうっけつ)型が半分以上を占めて、鍼灸は著効すると思うのですが、経験的にはかなり決め細やかな対応が必要になります。キャサリーナ・ダルトン先生の本を読むことをお勧めします。
「月経前症候群の精神症状に対する鍼治療効果の比較試験」
磯部 哲也
『日本東洋医学会雑誌』2016 年 67 巻 3 号 p. 264-273
「精神科からみたPMS/PMDDの病態と治療」
大坪 天平
『女性心身医学』2017 年 22 巻 3 号 p. 258-265
コメント