腧穴の過敏化と中国・経絡反応帯療法

 

2012年『中医雑誌』掲載
「腧穴の過敏化の内在的構成要素の探求」
腧穴敏化内涵探析[J].
姜劲峰,余芝,徐斌,王玲玲. 
中医杂志 2012(20)

 

熱敏灸の研究をしていて印象的なのは「腧穴の過敏化」の研究です。

ツボ(腧穴)には静的な状態の「静默相」と過敏化し活性化した「激活相」があるというのは当たり前の話ではあるのですが、血行な難問をはらんでいると思うのです。 

 

熱敏灸の熱敏穴は「腧穴(経穴+奇穴)」と一致する確率も多いですが、一致しない場合も多いです。基本的に灸の響きが出る病気の反応点なのです。私にとっては初期の熱敏灸の研究が筋筋膜性疼痛症候群だったというのが印象的です。

私は単純な筋筋膜性疼痛症候群に対してはトリガーポイント鍼や指圧を用いることが多いです。1983年にジャネット・トラベルとデビット・サイモンズが『トリガーポイントマニュアル』を書いたのですが、原題は“Myofascial Pain and Dysfunction, Vol. 1: The Trigger Point Manual”です。トリガーポイント鍼の治療対象の中心は筋筋膜性疼痛症候群です。東洋医学的には経筋病であり阿是穴治療です。中国ではトリガーポイントは激痛点と訳されているようです。

 

トリガーポイント理論では大別して「単なる硬結」「潜在的トリガーポイント」「活性化トリガーポイント」の三種類があります。

 

単なる硬結は押しても何も起こりません。患者も何も感じません。単に「コリコリ」と固い感じがするだけです。わたしは「死んだコリ」と呼んでいます。

 

潜在的トリガーポイントは自発痛はなく、皮膚に垂直に深く指圧すると局所の圧痛と遠隔まで放散する関連痛を起こします。いわゆる「響き」です。

 

活性化トリガーポイントは患者の訴える痛みの根源です。自発的があり、運動機能の低下や運動時痛を引き起こします。特徴は圧迫により関連痛を引き起こします。 鍼を直刺すると局所的単収縮を引き起こします。 アクティブ・トリガーポイントは術者の指頭にヌルヌル感(炎症による腫脹、浮腫)、ベトベト感(熱感)を感じます。「生きたコリ」です。グミのような小結節に指圧を加えると患者さんはジャンプするような痛み(ジャンプ・サイン)を示します。 このアクティブ・トリガーポイントが形成されると、共同筋や拮抗筋、同じ神経支配筋にサテライト・トリガーポイントが発生します。

 

このサテライト・トリガーポイントは、最初に形成されたトリガーポイント(プライマリー・トリガーポイント=真痛点)を鍼で刺激すると痛みがなくなります。それで最初のトリガーポイントは「プライマリー・トリガーポイント」「キー・トリガーポイント」と呼ばれ、「サテライト・トリガーポイント」は「セカンダリー・トリガーポイント」とも呼ばれます。

このトリガーポイント理論モデルは筋筋膜性疼痛症候群の鍼や指圧の治療をしていると経験する臨床的な現象をよく説明できる場合が多いです。この活性化トリガーポイントは電気抵抗が低く、パルス通電するとものすごく収縮します。

 

1993年「筋筋膜トリガーポイントは自発的活動電位を発現している」

Myofascial trigger points show spontaneous needle EMG activity.
Hubbard DR, Berkoff GM.Spine (Phila Pa 1976). 1993 Oct 1;18(13):1803-7.

 

サテライト・トリガーポイントまたはセカンダリー・トリガーポイントはプライマリー・トリガーポイントの活性化により同じ筋肉内や同じ神経支配の筋肉などのトリガーポイントに痛みを発生させているのであり、刺しても一時的にしか痛みがとれないことが多いです。

おそらく、このプライマリー・トリガーポイントの理論は筋筋膜性疼痛症候群で、ある一点に正しい角度で刺鍼したとたんに痛みが消失するという現象をよく説明できると思います。

 

現在、痛みの「中枢性感作」という言葉がキーワードになっています。「感作」とは過敏化、鋭敏化するという単語です。中枢とは脳など中枢神経系のことです。

1983年にクリフォード・ウォーフという科学者が『ネーチャー』において「痛みの過敏化・中枢化」について初めて論じました。慢性痛の患者は末梢レベルと中枢(脳)のレベルで痛みが中枢性感作という脳での過敏化を起こしています。そして、ある人には痛みの中枢性感作が起こり、ある人には中枢性感作が起こらないという個人差がここでも問題になっています。

 

中枢性感作症候群と呼ばれる疾患を列挙してみると、以下になります。

過敏性腸症候群(IBS)などの内臓過敏症候群
線維筋痛症
手術後疼痛
顎関節症
筋骨格系疾患
頭痛
変形性関節症
神経障害性疼痛

 

これらはまさに鍼灸師が臨床で扱っている一番得意な疾患ばかりになります。鍼灸の作用機序はおそらく、この中枢性感作によるトリガーポイントの活性化と関連していると思います。

この潜在的トリガーポイントと活性化トリガーポイントの理論は、中国熱敏灸の腧穴の静的な状態の静默相と過敏化し活性化した激活相があるという理論にそっくりです。

ただ、熱敏灸を実際に用いると経絡理論のほうがしっくりきます。

 

経絡反応帯療法
山西医学院第一付属医院著、
浅川 要訳、東洋学術出版社 (1985/06)

 

上記は1978年に山西省の山西中医学院第1付属医院が出版した経絡穴区帯療法で、中医学鍼灸を代表する浅川要先生が翻訳されました。反応帯の中の「反応穴=活穴(敏感点)」をとります。

この山西省の中医学院の鍼灸治療法は、1950年代の日本の長浜善夫先生の経絡現象を研究した『経絡の研究』を参考文献に挙げており、前半は副鼻腔炎や風邪など各疾患の反応帯を論じ、後半は経絡現象を論じています。熱敏灸の参考になると思われます。

 

 

 

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