承淡安澄江鍼灸学派と楊長森先生と邱茂良先生と鍼灸弁証論治の誕生

 

 

 

「南京中医薬大学張建斌先生に聞く 承淡安と澄江鍼灸学派が現代中医鍼灸に与えた影響」
『中医臨床』 36(3): 456-468, 2015.

 

南京中医薬大学、澄江鍼灸学派伝承工作室の張建斌(ちょうけんそう)先生のインタビューです。

承淡安先生の門下である内科医であった楊長森先生が中医薬の理法方薬を応用して鍼灸弁証論治の理法方穴術という考え方をクリエイトしたという証言です。

楊長森先生は1928年江蘇省の中医の家系に生まれました。1949年より開業し、1955年より承淡安先生が校長を務める江蘇省中医進修学校で鍼灸の講師として働きます。

 

2010年「楊長森教授の現代鍼灸学術の貢献」
杨长森教授对现代针灸学术的贡献
张建斌
《中国针灸》 2010年12期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE201012033.htm

 

楊長森先生の著書の『针灸学讲义』『针灸治疗学』は2012年に中国で出版されています。

2012年「楊長森鍼灸学講稿」
杨长森针灸学讲稿
人民卫生出版社:2012-11-01
https://item.jd.com/1027685187.html

 

楊長森先生は1950年代に『鍼灸学講義』という教材を作成し、これは1980年代に『鍼灸治療学』という教材となりました。2006年に日本の淺野周先生が『全訳鍼灸治療学 (中医薬大学全国共通教材)』としてたにぐち書店から翻訳出版されています。 楊長森先生は1980年代の中医学鍼灸教育のど真ん中にいた先生です。

 

 

邱茂良先生は『中医針灸学の治法と処方―弁証と論治をつなぐ』(2001年東洋学術出版社)の著者で、1952年に『鍼灸と科学』、1956年に『内科鍼灸治療学』を出版されました。

 

1959年には鍼灸による肺結核の治療を報告し、1978年には鍼灸による胆石症と細菌性下痢の治療を報告しています。1982年には鍼灸による脳卒中の治療で血流量の変化を調べています。

邱茂良先生は鍼灸弁証論治派の始祖の1人であり古典派のイメージでしたが、論文を調べると実際は中西医結合派に近いことを知り、驚きました。

 

1962年に以下の論文を書かれています。

1962年「針灸療法と弁証施治」
针灸疗法与辨证施治
邱茂良
《江苏中医药》 1962年05期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-JSZY196205000.htm

 

2004年の『中医臨床』に「針灸療法と弁証施治」という全く同じタイトルの論文があり、「この論文はいつごろ執筆され、どの雑誌に掲載されたものなのか不明である」という訳者メモが書かれていますが、上記の1962年のものではないでしょうか

針灸療法と弁証施治
邱茂良
中医臨床 25(3): 416-421, 2004

 

さらに羅兆据先生の穴性に関する記述や、陸痩燕先生の著作の記述を調べる必要があると思いますが、澄江鍼灸学派を調べて現代中医学鍼灸の歴史がかなりクリアーになってきました。

 

2008年から2009年にかけての日本の雑誌『中医臨床』で、 譚源生先生の「鍼灸の弁証論治形成の謎を解く」シリーズが掲載されて問題提起がおこなわれました。それから約10年が経過し、2010年代に学術的解明がかなり進みました。さらに澄江鍼灸学派は深く掘る価値があると感じました。 『内科鍼灸治療学』を書かれた邱茂良先生が肺結核・胆石症・細菌性下痢などの内科疾患を針灸治療し、科学的検証をしている姿勢に感動しました。WHO-ICD11に臓腑弁証が掲載されたことで、臓腑弁証、鍼灸と弁証論治の関係を検証する必要性にせまられて調査しているのですが、この調査のプロセス自体に深い価値を感じます。

 

「針灸の弁証論治形成の謎を解く」
譚源生
『中医臨床』 29(4): 608-613, 2008.
http://www.chuui.co.jp/chuui_plus/001571.php

 

「針灸の弁証論治形成の謎を解く(前)民国時代の針灸学」
譚源生
『中医臨床』 29(4): 614-618, 2008.
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I10163838-00

 

「針灸の弁証論治形成の謎を解く(中)穴性理論の誕生から針灸処方学へ」
譚源生
『中医臨床』 30(1): 126-133, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I10268808-00

 

「針灸の弁証論治形成の謎を解く(後)針灸治療は病位に, 中薬治療は病性にもとづく」
譚源生
『中医臨床』 30(2): 286-292, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I10435830-00

 

 

 

 

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