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熊胆と文化の押しつけ

 

2022年4月16日『ABCニュース』
「韓国は熊胆のクマ牧場に背を向ける」
South Korea turning its back on Asian black bear bile farming

 

以前、神戸の韓国領事館の前を通ると動物愛護団体の方々が「犬肉を食べないで」というプラカードを挙げてデモをしていました。

私は中国で犬肉料理を食べたこともありますし、イヌイットの捕鯨や和歌山のイルカ・クジラ食など、他人が伝統的に食べているものを、自分が食べないという理由から自文化を押し付ける行動には反対しています。

私が担当していた薬膳講座では「食べ物と差別を結びつけるのは、自文化中心主義です」と講義し、江戸時代の食養生の文献に犬料理が書かれていることも紹介しています。

江戸時代、牛肉食は禁止されていましたが、彦根藩は『本草綱目』の「返本丸」の記述から薬として牛肉のみそ漬けをつくり、薬として将軍家に献上していました。そこから彦根藩の近江牛の歴史ははじまり、「薬喰い」として牛肉食がはじまりました。それが近江牛の歴史です。

 

日本では、江戸時代に「ももんじ屋」として、いのししは牡丹(ぼたん)、鹿肉をもみじと呼び、これは漢方の薬であると称して「薬喰い」として肉食がはじまりました。京都のすっぽんの老舗も薬喰いでした。

薬喰いは俳句の季語辞典にも載っており、日本の文化と歴史の一部であり、東洋医学の一部でもあります。

江戸時代の動物製生薬も深い歴史があります。東北のマタギがクマを撃って、江戸時代もクマの胆のうである熊胆を生薬として使っていました。

韓国やヴェトナムにはクマ牧場があり、熊胆を採取していますが、最近は動物愛護団体からの圧力により、クマ牧場を禁止する流れになってきました。動物愛護団体と環境保護団体はクマの熊胆以外にもトラの虎骨やサイの犀角を問題にしています。

伝統医学が現代社会で生き残っていくには、社会のなかで動物愛護団体や環境保護団体と対話し、熊胆を使う製薬会社も含めてオープンに議論し、合意形成していく必要があると思います。

これが成熟した民主主義社会における大人の振る舞いであり、最も難しいです。

 

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