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2002年から2021年の神経因性疼痛の鍼研究のホットスポットとトレンド

 

2022年10月25日『ジャーナル・オブ・ペイン・リサーチ』
「神経因性疼痛に対する鍼治療のホットスポットとトレンドの研究: 2002 年から 2021 年までの文献分析」
Research Hotspots and Trends on Acupuncture for Neuropathic Pain: A Bibliometric Analysis from 2002 to 2021
Di Liu et al
J Pain Res. 2022 Oct 25;15:3381-3397
https://www.dovepress.com/research-hotspots-and-trends-on-a…

 

以下、引用。

計量書誌学による文献分析は、社会科学と計量科学を統合し、科学文献における隠れた構造を示し、科学のフロンティアについて、異なる視点を提供する。

表2は、最も頻繁に引用されたトップ10の論文著者である。もっとも頻繁に(585回)引用されたのは韓済生だった。韓済生は1984年に電気鍼の鎮痛とベータエンドルフィン、エンケファリン、サブスタンスPについて書いた。韓済生は、2ヘルツと100ヘルツの電気鍼が異なる神経ペプチドであるエンケファリンとダイノルフィンを分泌することを最初に書いた。

 

韓済生先生は、ブルース・ポメランツ先生や武重千冬先生とならぶ鍼麻酔時代の研究者の先生です。

2ヘルツ/100ヘルツの鍼鎮痛によるエンケファリンとダイノルフィン分泌という研究は1984年なので、すでに約40年前の情報になります。20代の研究者が60代の引退直前になるほど昔の話になります。

 

以下、引用。

ナンナ・ゴールドマンは参考文献のトップ10の1人であり、2011年から2014年に爆発的に引用された参考文献の2位である。この論文は、アデノシンを介した鍼の効果について書かれた。アデノシン鍼鎮痛メカニズムはホットスポットである。慢性疼痛のシステマティックレビューは、鍼がプラセボよりも優れていることを導いた。キャスリーン・フイのfMRI研究は、脳の構造が鍼のメカニズムで重要であることを示し、鍼のfMRI研究もまたホットスポットである。

 

 ナンナ・ゴールドマンとロチェスター大学の神経科学者マイケン・ネダーガードが『ネーチャー・ニューロサイエンス』に歴史的な鍼の研究を発表しました。

鍼は神経を刺激するのではなく、皮膚・皮下組織・結合組織を歪ませることでケラチノサイトからATPが放出されて、P2X3受容体を介して鎮痛作用を発現するというのです。

ATPが鍼の鎮痛に重要な役割を果たすことが判明しました。

皮膚・皮下・結合組織の歪みと引っ張りが鎮痛を引き起こします。

 

2010年「アデノシンA1受容体を介した局所の鍼の抗侵害受容的効果」
Adenosine A1 receptors mediate local anti-nociceptive effects of acupuncture
Nanna Goldman,Maiken Nedergaard. et al.
Nature Neuroscience 13, 883–888 (2010)

さらに、ピーター・イレス先生がアデノシンA1受容体による鎮痛について、ケラチノサイトよりも肥満細胞によるATPの放出という仮説を提出し、現在の鍼鎮痛の肥満細胞理論のリバイバルにつながっていくわけです。

 

著名な研究者アンドリュー・ヴィッカーズが、慢性疼痛の鍼の効果はプラセボより優れていることを証明しました。

 

2018年5月『ジャーナル・オブ・ペイン』
「慢性疼痛への鍼:個人患者のメタ・アナリシスのアップデート」
Acupuncture for Chronic Pain: Update of an Individual Patient Data Meta-Analysis
Andrew J. Vickers’ , Claudia M. Witt, Klaus Linde et al.
May 2018Volume 19, Issue 5, Pages 455–474

 

1998年からハーバード大学のカスリーン・フイ先生が鍼のfMRI研究を開始しました。

2000年代からはカスリーン・フイ先生とヴィタリー・ナパドウ先生が鍼の得気状態をfMRIで観察しました。

2001年にデフォルト・モード・ネットワークが発見されます。 デフォルト・モード・ネットワークはアクティブな活動中には鎮静化しており、休息時に活発に興奮するという神経細胞群で、2001年に発見されたので21世紀最初の脳科学の発見と言われました。とりとめのない内省的な思考をする際に、後部帯状回などのDMNの活動が活性化します。

 

2007年から2009年にカスリーン・フイ先生とヴィタリー・ナパドウ先生によって、鍼を得気した状態の脳では、 デフォルト・モード・ネットワークが活性化することが発見されます。

 

2007年「鍼の得気の特徴化」
Characterization of the “deqi” response in acupuncture.
Hui KK, Napadow V, et al.
BMC Complement Altern Med. 2007 Oct 31;7:33.

 

 

2009年「鍼は脳のデフォルト・モード・ネットワークを調節する」
Acupuncture mobilizes the brain’s default mode and its anti-correlated network in healthy subjects.
Hui KK, Napadow V, et al.
Brain Res. 2009 Sep 1;1287:84-103.

 

 

これらは神経因性疼痛だけでなく、疼痛の鍼の研究の基礎知識といえると思います。
このような計量書誌学による分析により、現在、採用している情報収集と分析の戦略の精度と方向性を確認することができます。

 

 

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