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【BOOK】『ひとの気持ちが聴こえたら:私のアスペルガー治療記』

 
ジョン・エルダー・ ロビソン (著), 高橋 知子 (翻訳)
早川書房 (2019/4/18)

 
 
頭皮鍼を研究している方は、ぜひ読まれることをお勧めします。
 
頭蓋骨から脳を磁気刺激する経頭蓋磁気刺激療法(TМS)は既に頭皮鍼の隣接分野となっていることは、神戸東洋医学研究会YouTube『東洋医学の最新情報』の『頭皮鍼』『頭皮鍼2』『頭皮鍼3』の動画で解説させていただきました。
 

 
 

 

 

 
 
 
50代の成人男性ロビソンの脳をハーバード大学がTМSで刺激しました。
 
ロビソンは自動車整備工場を経営するエンジニアです。自閉症で、機械の心はわかりますが、人の心はわかりません。若い頃から機械工学に詳しく、音響エンジニアをしており、ハードロックバンド、KISSのツアーに同行して、火を噴くギターを発明していました。
 
若い頃から音楽業界で働いていましたが、音楽を聴いても「ノイズが入っている」「クリアなサウンド」といったテクニカルな側面でだけ音楽を聞いていました。
 
ところが、実験で自閉症の脳を磁気刺激した帰りの車の中で衝撃的なことが起こります。音楽の歌詞の意味が突然、理解できるようになったのです。突然、音楽の感情的な意味が伝わってきたという衝撃的な体験の後、TMSの劇的な効果は時間と共に薄れていきますが、まるで生まれてから色の存在を知らなかった人が突然、「世界には色がある」と色覚を得たようなことが起こり、ロビソンさんは性格や行動が変わっていきます。
 
 
もう一人の若い自閉症男性、ニック(仮名)は、ゲームとYouTube以外は何もしない引きこもり状態でした。数学の天才的才能はありますが、高校では友だちがいません。ところが、経頭蓋磁気刺激療法(TМS)を受けたあとから妹に優しい言葉をかけて、友達ができて、卒業パーティーでは女の子から誘われます。家族は喜び、本人も「これが本当のボクだ」と感じます。
 
ところが、経頭蓋磁気刺激療法の効果は時間とともに薄れ、友達とうまくいかなくなり、家族からも孤立し、ふたたびゲームとYouTubeの生活に戻り、「TМSを受けて良くなったことをもう思い出せない。知らない。もう2度とTМSを受けたくない」と言い始めます。読んでいて、ものすごく悲しい気持ちになります。
 
この本はいろいろなことを考えさせられ、お勧めです。原著は以下です。
 
 
2016年「スウィッチ・オン:脳変化とエモーショナル覚醒のメモワール回想録」
John Elder Robison
Spiegel & Grau (2016/3/22)
 
 
ハーバード大学でロビソンさんのTМS実験研究を行ったアルバロ・カスパル・レオーネ博士の研究を調べてみました。
 
 
2023年3月アルバロ・カスパル・レオーネ
「慢性疼痛の進行時の脳の分離と破局的思考」
Brain system segregation and pain catastrophizing in chronic pain progression
Alvaro Pascual-Leone,et al.
Front Neurosci. 2023 Mar 16;17:1148176.
 
 
「慢性疼痛と破局的思考」ではデフォルト・モード・ネットワークの異常が特徴的となります。
 
デフォルト・モード・ネットワークは、鍼で慢性疼痛を治療する際に活性化する部分であり、fMRIが開発され、2000年代に発見された脳内ネットワークです。ボーっとしたときに活性化する部分がデフォルト・モード・ネットワークであり、頭皮鍼の隣接分野として経頭蓋磁気刺激療法をさらに知りたいと思いました。
 
 
 
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