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エビデンスマップにおける過敏性腸症候群

 
2020年11月22日
「成人の下痢型過敏性腸症候群または機能性下痢への鍼:システマティックレビューとメタアナリシス」
Acupuncture for Adults with Diarrhea-Predominant Irritable Bowel Syndrome or Functional Diarrhea: A Systematic Review and Meta-Analysis
Jianbo Guo et al.
Neural Plast. 2020; 2020: 8892184.
Published online 2020 Nov 22.
 
 
以下、引用。
 
鍼治療は下痢型過敏性腸症候群(IBSーD)、または機能性下痢(FD)患者の 1 週間あたりの排便回数を大幅に減らし、患者の全体的な症状を改善し、総有効率を改善し、再発率を低下させ、患者の痛みのレベルを軽減できることを発見した。
 
 
2022年11月『米国医師会雑誌(JAMA)』の米国退役軍人省のエビデンスマップで「過敏性腸症候群の鍼は中程度の確定度のエビデンスで効果ありとされています。
 
2012年7月のアメリカ、メリーランド医科大学のエリック・マンハイマーによるコクラン・システマティックレビューでは、「ランダム化比較試験では、真鍼と偽鍼の間で過敏性腸症候群の症状やQOLにおいて効果の違いは発見できなかった」と結論されました。
 
 
 
2012年コクランシステマティックレビュー
「過敏性腸症候群の鍼」
Acupuncture for treatment of irritable bowel syndrome.
Manheimer E,et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2012 May 16;5:CD005111.
 
 
しかし、2012年10月のイギリスのヒュー・マクファーソンの研究では、イギリスでの116人の患者を従来の治療プラス10回の鍼治療、117人の患者は従来の治療のみで3ヵ月後に比較したところ、鍼治療が統計的に有意に改善したと報告しています(+鍼治療49%、従来治療31%)。しかも、この利点は6ヵ月後、9ヵ月後、12ヵ月後も持続しました。これは画期的研究だと思います。
 
 
2012年10月
「過敏性腸症候群の鍼:プライマリケアに基づくプラグマティックなランダム化比較試験」
Acupuncture for irritable bowel syndrome: primary care based pragmatic randomised controlled trial
Hugh MacPherson et al.
BMC Gastroenterol. 2012 Oct 24;12:150.
 
 
鍼治療が腸管の痛覚閾値を上昇させて内臓痛を軽減するのは2005年の岩先生の論文での足三里(ST36)の電気鍼によるもので、ナロキソンで拮抗されたことにより、中枢性のオピオイド鎮痛のようです。
 
 
2005年「意識下のイヌの直腸拡張による血圧変化を電気鍼は減少させた」
Electroacupuncture reduces rectal distension-induced blood pressure changes in conscious dogs.
Iwa M et al.
Digestive Diseases and Sciences July 2005, Volume 50, Issue 7, pp 1264–1270
 
 
内臓痛とセロトニンに関しては、2006年の香港バブティスト大学の研究です。
 
 
2006年
「電気鍼はセロトニン・パスウェイを通じて慢性内臓痛のラットのストレスによる排便を少なくした」
Electro-acupuncture attenuates stress-induced defecation in rats with chronic visceral hypersensitivity via serotonergic pathway
Author links open overlay panelXiao YuTian
Brain Research Volume 1088, Issue 1, 9 May 2006, Pages 101-108
 
 
 
2011年の研究で、足三里(ST36)の電気鍼が慢性内臓過敏状態ラットの大腸での5HTレセプターレベルを減少させることで内臓痛を減らすことがわかりました。
 
 
Electroacupuncture at ST-36 relieves visceral hypersensitivity and decreases 5-HT(3) receptor level in the colon in chronic visceral hypersensitivity rats.
Chu D,
Int J Colorectal Dis. 2011 May;26(5):569-74. doi: 10.1007/s00384-010-1087-2. Epub 2010 Nov 10.
 
 
 
2012年の香港中医大学のfMRIを使った研究もセロトニン・パスウェイに言及しています。
 
「鍼治療は過敏性腸症候群の痛覚のニューラル・パスウェイを変化させるか」
Does acupuncture therapy alter activation of neural pathway for pain perception in irritable bowel syndrome?
Chu WC,et al.
J Neurogastroenterol Motil. 2012 Jul;18(3):305-16.
 
 
この研究は、以下の記述が面白かったです。
 
第2に鍼による脳活動の変化は、急性痛よりも慢性痛により関連しているのかもしれない。第3に、一回の鍼治療は脳活動の変化による(過敏性腸症候群の)臨床的鎮痛効果には不十分であるかもしれない。
 
 
 
過敏性腸症候群の基礎研究でもっとも注目しているのが、灸が過敏性腸症候群ラットの腸内細菌叢や免疫系を変化させるという2018年の研究です。
 
 
2018年7月
「灸治療は硫酸デキストランナトリウムに誘発された腸炎ラットモデルの腸内細菌叢と免疫機能を調節する」
Moxibustion treatment modulates the gut microbiota and immune function in a dextran sulphate sodium-induced colitis rat model.
Qi Q,et al. 
World J Gastroenterol. 2018 Jul 28;24(28):3130-3144.
 
 
 
2018年12月
「過敏性腸症候群ラットの腸内細菌叢は灸の刺激によって調節される」
Gut Microbiota Was Modulated by Moxibustion Stimulation in Rats With Irritable Bowel Syndrome
Xiaomei Wang
Chin Med . 2018 Dec 18;13:63.
 
 
 
2019年8月
「灸の効果はGDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)とその大腸レセプターと脊髄神経を過敏性腸症候群ラットで調節する」
Effect of Moxibustion on the Expression of GDNF and Its Receptor GFRα3 in the Colon and Spinal Cord of Rats With Irritable Bowel Syndrome
Qin Qi et al.
Acupunct Med . 2019 Aug;37(4):244-251.
 
研究は、鍼灸が腸機能と内臓過敏症を緩和し、異常なセロトニン、TRPV1、ヒート・ショック・プロテイン70の調節を通じてその治療効果をあらわすことを示している。
 
 
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