「中医鍼灸、そこが知りたい」
金子 朝彦
東洋学術出版社 (2011/01)
肩こりの講義準備で繰り返し読み込んだ一冊です。中医学鍼灸弁証論治のスタンダードとして推奨します。腰痛は石原克己先生の論文、肩こりは金子朝彦先生の弁証を基礎にしていけば、日本の中医学鍼灸は良い方向で発展すると思います。
(1)体型と肩こり
1.肺気虚の肩こり
体型:背中の丸みが強い。
症状:短気(たんき:短气:duǎn qì:呼吸が短く急)。肩こりは疲労で悪化する。
治療:中府・雲門。足三里、中脘、肺兪、身柱、命門が常用穴。
2.腎虚の肩こり
体型:腰部が前屈。腰が折れる。クビに横シワ(腰が前屈し、頸部は後弯)。
症状:夜間痛や刺痛など瘀血症状
治療:骨会の大杼、腎兪、命門。
3.脾虚の肩こり
体型:くびはうつむき加減。
症状:全身疲労、食欲不振、悪心。
治療:行気・補気で足三里・中脘・膏肓・脾兪・胃兪の灸頭針。
4.痰飲(熱痰)の肩こり
体型:プロレスラーの橋本真也
症状:赤ら顔、多汗、多痰、すっきり排便できない。
治療:足三里、内関、滑肉門、くびの陽経胃経。
(2)痺証
1.客表:風寒束表:散鍼
2.傷表:寒湿傷表:大椎・命門せんねん灸
3.経絡疏通傷害:寒凝気滞血瘀:灸頭鍼
4.邪正ともに虚す:気血両虚:喜按:灸頭鍼
5.臓腑証:肝気鬱
(3)心因性の肩こり
1.魂失調の肩こり:肝血虚に準じる
2.意失調の肩こり:脾虚に準じる。
3.志失調の肩こり:腎虚に準じる。
4.神失調の肩こり:心血虚に準じる
1.肩こりと痃癖の歴史
「肩こり」は英語や中国語には存在しません。江戸時代は痃癖と呼ばれ、江戸時代、本郷正豊の『鍼灸重宝記』にも「痃癖(肩こり)」の鍼灸治療の記述があります。
【肩こりの総説論文】
『〈総説〉肩こりの臨床–適切な診断と治療のために』
森本 昌宏
『近畿大学医学雑誌』 35(3-4), 151-156, 2010-12-01
この論文が最もまとまっており、漢方の弁証論治も載っています。
The Historical Origins of Katakori
栗山 茂久
KURIYAMA Shigehisa
Nichibunken Japan review : bulletin of the International Research Center for Japanese Studies 9, 127-149, 1997-01-01
白杉 悦雄
『冷えと肩こり 身体感覚の考古学 』
講談社選書メチエ2014/8/12
「肩こり」とその背景
矢野 忠
『全日本鍼灸学会雑誌』
1996 年 46 巻 2 号 p. 91-95
2.「肩こり」の中医学鍼灸弁証論治について
中医学鍼灸の立場からは肩こりの鍼灸弁証論治について基礎と先行研究を知っておいたほうが良いです。
「中医鍼灸、そこが知りたい」
金子 朝彦
東洋学術出版社 (2011/01)
『〈総説〉肩こりの臨床–適切な診断と治療のために』
森本 昌宏
『近畿大学医学雑誌』 35(3-4), 151-156, 2010-12-01
『針灸学 臨床篇―日中共同編集』
天津中医学院・後藤学園
東洋学術出版社1993年
3.肩こりのレッドフラッグ徴候
肩こりの臨床では狭心症・心筋梗塞の肩こり、肺尖部のパンコースト腫瘍、肺底部の横隔膜浸潤による肩こり、胆石症や胃潰瘍の肩こりなどの内臓性の肩こりおよび、そのメカニズムを解説できることが望ましいです。
「肩こり患者の病歴と身体診察」
仲田 和正 西伊豆病院
『JIM』 19巻4号 (2009年4月)pp.262-265 2009年4月15日
『肩こりの臨床―関連各科からのアプローチ』
森本 昌宏
克誠堂出版2013年
『鍼灸不適応疾患の鑑別と対策―66症例から学ぶ』
代田 文彦
医道の日本社1994年
4.日本伝統医学(漢方)における痃癖(げんぺき)の概念について
日本伝統医学における痃癖と延年半夏湯の概念を学ぶと、日本人の体質にあった肩こり治療をより深く考えることができると感じます。
「延年半夏湯について」
細野 史郎『日本東洋醫學會誌』Vol. 9 (1958) No. 4 P 127-142
「延年半夏湯の臨床的研究」
矢数 道明『日本東洋醫學會誌』Vol. 13 (1962) No. 2 P 59-64
「デルマトーム図」
下津浦 宏之, 井上 聖啓
『脊髄外科』
2012 年 26 巻 2 号 p. 147-161
日本語では間違いなく最高品質の研究です。
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