抑肝散と電気鍼の組み合わせによる先取り鎮痛効果

 
2021年6月16日 昭和大学医学部
「急性炎症性疼痛のラットへの漢方『抑肝散』と電気鍼の組み合わせ治療の鎮痛効果」
Analgesic Effect of Combined Therapy with the Japanese Herbal Medicine “Yokukansan” and Electroacupuncture in Rats with Acute Inflammatory Pain
Nachi Ebihara(海老原那智)、Hideshi Ikemoto(池本英志),Masataka Sunagawa et al.
 
 
この海老原那智先生の論文こそが鍼の鎮痛作用の科学的研究の最前線だと思います。分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼにおけるERK1/2(細胞外シグナル調節キナーゼ)の活性化を抑制することで、抑肝散と電気鍼は急性痛が慢性疼痛に遷延化することを予防できます。
 
 
痛みの記憶が今後、問題になってくると予測しています。まず、2019年の日本ペインクリニック学会で、著者の一人、池本英志先生は、電気鍼と抑肝散を組み合わせた「補完的アプローチによる先取り鎮痛効果 〜ラット急性炎症性疼痛モデルを用いた検討〜」によって最優秀演題賞を受賞しました。
 
 
2019年7月30日昭和大学医学部
「池本英志助教が日本ペインクリニック学会 第53回大会で最優秀演題賞を受賞しました 」
 
 
ラット急性炎症性疼痛モデルを用い、術後痛の軽減また慢性化の予防に各種補完的アプローチ(経皮的神経電気刺激(TENS)、電気鍼、漢方治療(抑肝散)、また電気鍼と漢方薬の併用療法)が有用であるかを検討した。その結果、TENSや電気鍼治療は先取り鎮痛効果を示し、電気鍼治療と漢方(抑肝散)治療を併用することで、更に強い鎮痛効果が得られた。また作用機序として炎症誘発によるERKシグナル伝達経路のリン酸化を抑制することも明らかにした。これらの結果から、外科処置の際のTENSや電気鍼治療、また電気鍼と漢方治療との併用は、術後痛の軽減や遷延化の予防効果が期待される。
 
 
 
2019年
「補完的アプローチによる先取り鎮痛効果~ラット急性炎症性疼痛モデルを用いた検討~」
池本英志1), 岡田まゆみ1,2), 久光正1), 砂川正隆1)
1)昭和大学医学部生理学講座生体制御学部門, 2)昭和大学医学部麻酔科学講座
日本ペインクリニック学会誌 26(3): 118-118, 2019.
 
 
先取り鎮痛効果とは、ゲートコントロール理論のメルザックとウォールのロナルド・メルザックが提唱しました。痛みが記憶されないうちに鎮痛効果をほどこすことで術後疼痛を事前に鎮痛することです。
 
抑肝散は脊髄ミクログリア細胞の増加を抑制することで神経障害性疼痛の発生を予防することが昭和大学医学部の研究で提唱されています。
 
 
2015年
「抑肝散はラットの脊髄グリア細胞活性の阻害により、モルヒネ耐性の発展を予防する」
Yokukansan, a Kampo medicine, prevents the development of morphine tolerance through the inhibition of spinal glial cell activation in rats
Integrative Medicine Research
Volume 5, Issue 1, March 2016, Pages 41-47
Available online 31 December 2015.
 
 
2021年6月の昭和大学医学部の電気鍼と抑肝散の論文は新しい疼痛パラダイムの論文であり、まさに疼痛科学の世界の最先端だと思いました。
 
 
2020年6月台湾・中医大学
「いくつかの神経システム疾患におけるp38パスウェイにおける鍼の効果:システマティックレビュー」
Effect of Acupuncture on the p38 Signaling Pathway in Several Nervous System Diseases: A Systematic Review
Tzu-Hsuan Weiet al.
Int J Mol Sci. 2020 Jul; 21(13): 4693.
Published online 2020 Jun 30. doi: 10.3390/ijms21134693
 
 
 
 

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする