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【BOOK】『トリガーポイント・ドライニードリング』

 
2018年
Trigger Point Dry Needling, 2nd ed.:An Evidence and Clinical-Based Approach
J.Dommerholt & C.Fernandez-De-Las-Penas
ELSEVIER 2018
 
 
肩痛の鍼の研究者、セザル・フェルナンデス・デ・ラス・ペニャス先生が執筆した「第3章 ファッシャ、瘢痕、腱のドライニードリング」は画期的でした。また「第13章 スーパーフィシャル・ドライニードリング」も素晴らしいです。
 
スーパーフィシャル・ドライニードリングは英国鍼師会の会長であるビーター・バルドリーが提唱しました。
 
もともと1979年にチェコの医師、カレル・レウィットがドライ・ニードリングを提唱しました。これは薬液を入れた注射針を使ったトラベルの方法を「ウェット・ニードリング」として、薬液を入れない注射針や鍼灸の鍼を治療に使い、「ドライ・ニードリング」と呼びました。
 
1984年にカレル・レウィットはデビッド・サイモンズとポスト・アイソメトリック・リラクゼーション・エクササイズを提唱します。
 
1989年にカナダの医師、チャン・ガン先生がディープ・ドライ・ニードリング、筋内鍼刺激(イントラ・マスキュラースティミュレーション)を開発し、1989年に最初の本〝Treating Myofascial Pain: Intramuscular Stimulation〟を出版しました。これは『筋筋膜痛の治療―ハリ治療の西洋医学的手法』として日本語訳されており、わたしも1995年にリアルタイムで読みました。
 
 
C.CHAN GUNN
克誠堂出版 (1995/7/1)

 
※Treating Myofascial Pain: Intramuscular Stimulation
C.CHAN GUNN
Health Sciences Center for (1989/12/1)
 
 
 
2002年にピーター・バルドリー先生がスーパーフィシャル・ドライ・ニードリング(SDD)を提唱します。
 
 
2002年「スーパーフィシャルVSディープ・ドライ・ニードリング」
Superficial versus deep dry needling
Peter BaldryAcupunct Med. 2002 Aug;20(2-3):78-81
 
 
ピーター・バルドリー先生はキングス・カレッジ・スクールの出身です。福沢諭吉が慶應義塾のモデルにしたキングス・カレッジ・スクールに在学中から医学に興味を持ち、王立陸軍医療軍団に入隊して医師となります。
 
第2次世界大戦後も結核の医師として抗生物質の威力に魅了され、45歳の1965年に、「バクテリアとの闘い:抗生物質の開発の歴史(The battle against bacteria. A history of the development of antibacterial drugs)」をケンブリッジ大学出版局から出版しました。
 
ピーター・バルドリー先生の妻は筋肉の痛みをかかえており、鎮痛薬なしで治療するために鍼に興味を持ちます。おそらくイギリス王立内科医師会のフェロー特権会員で初めて鍼を研究した人物です。
 
ピーター・バルドリー先生は、斜角筋のトリガーポイントで治療している際に気胸を恐れて浅く刺しても効果が出たことからスーパーフィシャル・ドライ・ニードリングを提唱しました。
これは、1989年に出版した文献で発表されました。
 
 
1989年ピーター・バルドリー
「鍼、トリガーポイント、筋筋膜痛」
Acupuncture, trigger points, and musculoskeletal pain
Baldry, Peter
Churchill Livingstone; 1989
 
 
1993年に第2版が出版され、1996年に川喜田健司先生が医道の日本社から翻訳を出版されています。
2005年には英語で第3版も出版されました。第3版の出版された当時、ビーター・バルドリー先生は85歳です。
 
 
1996年『トリガーポイント鍼療法』
P・E・Baldry (著),
川喜田 健司 (翻訳)
‎ 医道の日本社 (1996/8/1)
 
 
スーパーフィシャル・ドライ・ニードリングは臨床でも重要ですし、浅い鍼と深い鍼の比較問題やランダム化比較試験でも重要ですが見落とされています。何より「鍼はどの組織に働きかけているのか」という重要な問題を提示していると思います。
 
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