「季節病の医学地理学的研究(1):日本の季節病カレンダー」
籾山 政子『気象集誌』. 第2輯 38(1), 47-60, 1960
以下、引用。
もともと冬の季節病である心臓病や脳出血は、戦後もそのまま冬に流行期を示す。
籾山政子先生は日本を代表する生気象学者です。ドイツでは気象が生物に与える影響を研究する生気象学が盛んで、1952年からハンブルクでは医学気象予報を出していました。
冬の季節病として、心臓病(心痺)や脳卒中(中風)などの血管病、循環器疾患が増えるのは当たり前です。高齢者では死亡率は冬季の11月から上昇します。
西洋医学的には、インフルエンザやRSウイルスによる肺炎や気管支炎などの呼吸器疾患が増えます。
慢性気管支炎は冬に著明に悪化します。カゼをひいてなおりきらない咳や慢性気管支炎の咳嗽に鍼灸はよく効きます。
ノロウイルスやロタウイルスによる胃炎や腸炎などの消化器疾患も増えます。
現代中医学はノロウイルスを诺如病毒と呼び、寒湿困阻型と湿熱困阻型に分類しているようです。日本漢方は太陽経蓄水の五苓散や太陽少陽合病下痢の黄芩湯や太陽太陰併病の桂枝人参湯などを使用しています。鍼灸では個人的に、裏内庭の透熱灸を愛用しています。
泌尿器疾患でも冬になると頻尿となるという過活動膀胱や膀胱炎は、八髎や中極の八分灸が著効します。
自己免疫疾患では、関節リウマチは冬に悪化しがちです。
「自己免疫性疾患と季節の関連」
小倉 剛久, 亀田 秀人
『日本臨床免疫学会会誌』2014 年 37 巻 1 号 p. 25-32
精神病の季節性情動障害は日照量が少なくなるとうつ症状が出るので、冬季うつ病ともいわれます。
中国伝統医学には因時制宜、因地制宜、因人制宜の原則があります。季節、地域、年齢性別などの因子によって、病気のかかりやすさが変化します。
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