「穀食忌避の思想–辟穀の傳統をめぐって」
麥谷 邦夫『東方學報』 京都 72, 181-212, 2000
東洋医学を学ぶ優秀な学生の方に断食について質問されました。
もちろん、東洋医学の中に断食健康法は存在しますと答えました。
現在も東北大学医学部心療内科の中に断食療法が伝統として有名です。これは東洋医学の造詣が深かった九嶋勝司先生の影響だと思います。兵庫県淡路島には公営の断食道場があり、医師の笹田先生が医学的見地から行っています。
『絶食療法(ファースティング)―淡路島健康道場の試み』
笹田 信五 日本放送出版協会 (1997/06)
東北大学心療内科では心身症に絶食療法をおこなっています。
断食すると、脳が赤ちゃんのような状態となって説得を受けやすくなり、認知の歪みがとれやすくなります。人間の脳は食事を絶たれ生存本能が働く場面になると柔軟になり、脳の信念体系の組み換えが起こりやすくなります。私たちが外国に行って外国語を話さないと飢え死にする状態になったら、驚くほどのスピードで外国語を習得できます。サバイバルのために脳にスイッチが入ります。
中国共産党がやった外国人捕虜の洗脳も同じです。新しい信念体系になれば、食事がもらえるとなれば、人間は凄いスピードで信念を組み替えられます。世界中の宗教が断食しているのも同じ理由です。だから、断食は心身症や心療内科領域に効果があります。
東洋医学的には解毒です。「怪病多痰」といって、東洋医学でも食べすぎなどが精神病や病気の原因と考えています。戦後の東洋医学者は断食を使われて、日本東洋医学会雑誌などでも発表されています。
「断食療法の検討 第二報」
松原 弘晃『日本東洋医学会雑誌』1958 年 9 巻 4 号 p. 148-162
現在、知っておくべきなのは、西式健康法の西勝造先生の流れをくむ甲田光雄先生の断食療法です。
『低エネルギー菜食療法及び,絶食療法のノイロメトリーに及ぼす影響』
甲田 光雄『日本良導絡自律神経学会雑誌』1990 年 35 巻 6-7 号 p. 161-167
甲田光雄先生の指導を受けた鍼灸師の森美智代先生は2010年の映画『不食の時代 〜愛と慈悲の少食』にも出演されています。
以上のような淡路島の公営断食道場、東北大学心療内科の絶食療法、西式健康法の甲田光雄先生や不食ブームなどをお伝えしました。
そのあとで、思い出したのが、古代中国の「服気辟穀(ふくきへきこく)」の思想です。これは『荘子』や『史記』などの春秋戦国時代から漢代の中国古典にも記述がある神仙術であり、五穀を絶ち、気功をするという2,000年前の糖質制限健康法です。
「馬王堆医書」にも「却穀食気」があります。
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