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整動鍼『ツボがある本当の意味 〜経絡理論を根底から覆すツボの考え方〜』

 

発売日よりだいぶ前にAmazonに予約注文した整動鍼の栗原誠先生著、『ツボがある本当の意味 〜経絡理論を根底から覆すツボの考え方〜』がやっと届きました。

 

栗原先生のインタビューが掲載された『月刊 秘伝 2019年 04月号』 は発売日の3月14日に読んでいたのですが・・・。ぜひ整動鍼のセミナーに参加したいのですが、この本の出版をきっかけに人気が出すぎて、セミナー参加が難しいのではないかと危惧しています。

 

整動鍼はグローバル志向があり、組織運営の設計がしっかりしており、病院などでもエビデンスを出そうとされており、新しい若いエネルギーを感じるため、今後は日本や世界でさらに拡がと予測しています。

 

最近、アメリカなどでは“Seitai acupuncture”という日本の整体の考え方からの鍼も登場しており、海外でも日本の武道由来の整体的な鍼は明確に需要があります。また、現在の中国の中医学鍼灸は空理空論に陥り、臨床的な「治す力」が落ちているので、 整動鍼は本場・中国でも普及する可能性があると思います。

 

ここで、イギリスのウエスタン・メディカル・アキュパンクチャーの歴史を振り返ると、
1973年のニクソン訪中直後の針麻酔ブームの際に、イギリス鍼協会初代会長のフェリックス・マンが「経絡はない!ツボはない!」と提唱し、従来の中国伝統医学から脱却を主張しました。これが、現在のウエスタン・メディカル・アキュパンクチャーの始まりで、中国伝統医学からの独立宣言といわれています。

 

後継のイギリス鍼協会2代目会長のアレクサンダー・マクドナルドは、腰痛に対してはじめて対照群をつくった臨床試験を行い、慢性腰痛に対して4ミリの深さの皮下組織への浅い鍼とプラセボを比較試験しています。4ミリの皮下組織への浅い鍼でも、プラセボと比較して統計的に有意に腰痛を軽減するという結果を報告しています。

1983年イギリスのアレクサンダー・マクドナルド「慢性腰痛への浅い鍼」
Superficial acupuncture in the relief of chronic low back pain.
A. J. Macdonald et al.Ann R Coll Surg Engl. 1983 Jan; 65(1): 44–46.

 

歴史的には、このランダム化比較試験が画期的でした。1986年にイギリス北アイルランドの麻酔科医ジョン・ダンディーが1986年の『英国医師会雑誌』に「伝統中国鍼灸:使える制吐剤?」という比較試験の論文を発表します。わずか2ページですが、婦人科手術への内関への5分間の置鍼で75例を対象として、プラセボ群よりも鍼群のほうが改善していたというものです。

1986年「伝統中国鍼灸:使える制吐剤?」
Traditional Chinese acupuncture: a potentially useful antiemetic?
Dundee JW, Chestnutt WN, Ghaly RG, Lynas AG.
Br Med J (Clin Res Ed). 1986 Sep 6;293(6547):583-4.

 

次の1987年にジョン・ダンディーが『英国医師会雑誌』に発表した以下の論文は1ページの3分の1という短さです。

1987年「がん化学療法における制吐剤の最適化」
Optimising antiemesis in cancer chemotherapy.
Dundee JW, Ghaly RG, Fitzpatrick KT, Lynch G, Abram P.
Br Med J (Clin Res Ed). 1987 Jan 17;294(6565):179.

 

1987年にジョン・ダンディーは『ランセット』にも癌患者の化学療法のシスプラチンに関連した吐き気について内関への鍼通電を発表しました。

1987年「シスプラチンに関連した吐き気の予防のための鍼」
Acupuncture to prevent cisplatin-associated vomiting.
Dundee JW, Ghaly RG, Fitzpatrick KT, Lynch GA, Abram WP.
Lancet. 1987 May 9;1(8541):1083.

 

1989年にジョン・ダンディーは『英国王立医学会誌』において癌患者の化学療法の吐き気に対して内関への鍼通電を行った論文を発表しました。

1989年「がん化学療法による病状への鍼による予防」
Acupuncture prophylaxis of cancer chemotherapy-induced sickness.
Dundee JW, Ghaly RG, Fitzpatrick KT, Abram WP, Lynch GA.
Department of Anaesthetics, Queen’s University of Belfast.
J R Soc Med. 1989 May;82(5):268-71.

 

 

イギリスの鍼の歴史を振り返ると、イギリス政府から大英帝国勲章をもらった大学者の麻酔科医だったジョン・ダンディーという権威ある存在が、引退直前に『英国医師会雑誌』『ランセット』『英国王立医学会雑誌』という権威ある雑誌に次々と論文を発表したのが決定打でした。

10年後の1997年にアメリカ国立衛生研究所が鍼の効果に科学的根拠を認めましたが、それは ジョン・ダンディーによる内関の悪心・嘔吐へのランダム化比較試験の研究が決定的な影響を与えました。1997年のアメリカ国立衛生研究所の声明文は「鍼の効果の科学的機序は不明だが、鍼の臨床効果には科学的根拠がある」という要旨でした。

 

イギリスのウエスタン・メディカル・アキュパンクチャーの歴史をみると、『ツボがある本当の意味 〜経絡理論を根底から覆すツボの考え方〜』の出版はフェリックス・マンの『経絡はない!ツボはない!』という西洋医学鍼の独立宣言に相当すると思います。栗原先生の場合は「経絡はない!ツボはある!」のようですが。

 

実は、日本は室町時代や江戸時代から「経絡否定論」が強かった特殊地域で、戦後に「経絡論争」という経絡肯定派と経絡否定派が大論争をした歴史もあります。

日本鍼灸の本流はずっと経絡否定論だと思われます。だから不毛なイデオロギー論争に足をすくわれずに、イギリス鍼灸のように病院でのランダム化比較試験でエビデンスをつくるのがよいと思います。

 

イギリス、アメリカの鍼灸にとって、1991年にゴードン・ガイアットが最初にEBM(エビデンス・ベースド・メディスン)を提唱したという時代の変革期のめぐり合わせも良かったです。

EBMという科学革命が起こった時期に、イギリス鍼灸業界には経絡否定論のフェリックス・マン、ランダム化比較試験を導入したアレキサンダー・マクドナルド、ジョン・ダンディーという有能な人材がたまたま揃っていました。EBMの時代になり、鍼灸が効くメカニズムはブラックボックスでも、臨床試験をしたら効いているという事実は否定できなくなりました。

 

因果論やメカニズム論が中心の時代との大きな違いです。メカニズム論の論争は容易に政治的なイデオロギー論争や党派争いに転化し不毛です。例えば、心理学の世界では鍼灸以上に多くの対立する流派が存在します。しかし、ランダム化比較試験をしてみたら「臨床結果に流派間の優劣はない」ことが何度も再現されています。

 

メカニズム論の論争は不毛なので、整動鍼の先生方はぜひ、病院内で整動鍼の臨床的エビデンスが出たら、次は他流派間のランダム化比較試験にトライしてみてはいかがでしょうか。日本というローカル地域で優勢となっているメカニズム論のワナに捉われることなく、新しいパラダイムであるEBMで発展していくのが望ましいと思います。格闘技も「〇〇最強説」と流派内でそれぞれが言っていましたが、総合格闘技MMAの時代になったらすぐに結果が出ました。「経絡否定論」は新しくありませんが、流派間のランダム化比較試験を仕掛けていくのは新しい試みです。

 

ただ、日本は本質的にも、歴史的にも、心情的にも経絡否定論が優勢な地域なので、潜在的には整動鍼の支援者とファンを拡大するための本拠地であり、秦代から漢代の項羽と劉邦の争いの、劉邦にとっての『蜀・漢中』にすべきだと思います。

明確に「経絡肯定派」と言えるのは、世界に「一帯一路」で中医学を拡大している中国政府と一体化した中医薬大学の中医学鍼灸(TCM)です。国内で小さな争いに終始するのではなく、グローバルなセントラル・ドグマを権威づけているTCMにランダム化比較試験で結果を出すのが最も効率がよいと思います。

 

ぜひセミナーに参加して体験したいです。これからどんどん伸びていく雰囲気があります。

 

 

 

蛇足ですが、劉邦にとっての『蜀・漢中』について、以下に記します。

劉邦は項羽との戦いにおいてへんぴな蜀に押し込められました。ただ、蜀はへんぴな場所ですが食糧が豊富で、なにより国士無双の韓信という人材を得ました。

劉邦は強大な項羽に負け続けますが、蕭何が蜀・漢中という基地を善政で守り続け、後方から充分な「ヒト・モノ・カネ」を送り続けました。劉邦がついに項羽を倒した後、補給基地の蜀・漢中を守り続けた蕭何を第一の功臣としました。劉邦が持久戦を戦い続け勝利した最大の要因は、素晴らしい人材と食糧を安定して供給できる蜀と漢中があったからというロジスティックスの重要性を伝える故事です。

 

 

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