2000~2010年代の花粉症・アレルギー性鼻炎の弁証論治に関する議論

 

2017年、内蒙古中医学院が“Traditional Chinese Medicine”に発表した
「気虚陽虧アレルギー性鼻炎研究の概況」
气虚阳亏型变应性鼻炎的研究概况
王慧颖,李林,高斐宏,卢炀,李小薇,尤晓苗,刘毅毅
The Research Situation of Allergic Rhinitis with Qi Deficiency and Yang Deficiency
Huiying Wang, Lin Li, Feihong Gao, Yang Lu, Xiaowei Li, Xiaomiao You, Yiyi Liu
Traditional Chinese Medicine
Vol.06 No.01(2017), Article ID:19801,5 pages
10.12677/TCM.2017.61002

 

この論文では鼻鼽(びきゅう)、アレルギー性鼻炎を従来通り、
(1) 肺虚感寒型(肺虚感寒型)
(2) 肺脾气虚型(肺脾気虚型)
(3) 肾阳亏虚型(腎陽虧虚型)
から分類しています。

 

しかし、同時に、以下のように述べています。
以下、2017年「気虚陽虧アレルギー性鼻炎研究の概況」より引用。

アレルギー性鼻炎は多種類型があるけれども、気虚陽虧型が常にみられる型である。

 

2016年に天津中医薬大学が発表したアレルギー性鼻炎の論文も、外寒(風寒)と内寒(水飲)の重なった状態と分析しています。

 

2016年「アレルギー性鼻炎の寒による論治の理論の探求」
从寒论治过敏性鼻炎的理论探讨. 
丁琦,袁卫玲,刘华
辽宁中医杂志 2016年第 43卷第 5期

 

臨床的には、外寒(風寒)と内寒(水飲)の重なった状態は結構あると思います。また、気虚陽虧型も多いと思います。

ユニークなのは、2017年論文「気虚陽虧アレルギー性鼻炎研究の概況」では、疏肝調神を治則としてあげていることです。
以下、2017年「気虚陽虧アレルギー性鼻炎研究の概況」より引用。

アレルギー性鼻炎の各治療型の治療過程において、筆者は肝と関連があると考えた。肝臓は全身の気機を調節し、肝気がのびやかなら脾土を相克せず、肝気が調和すれば肺気の宣発粛降を助ける。肝木が柔らければ腎水を消耗しない。アレルギー性鼻炎は精神と関係しており、精神的緊張はアレルギー性鼻炎を引き起こしやすい。石志紅は「疏肝調神法」を用いてアレルギー性鼻炎を治療し、合谷・太衝・肝兪・百会・印堂はアレルギー性鼻炎の症状が引き起こす症状に大きな補助的作用をもつ。

 

 

中国の鍼灸弁証論治派を代表する趙吉平先生がこの「アレルギー性鼻炎に対する疏肝調神法」論文の著者の1人なのです。

 

石志红, 赵吉平.et al.
「疏肝調神法のアレルギー性鼻炎の治療の作用」
“疏肝调神法”在治疗过敏性鼻炎中的作用[J].
内蒙古中医药杂志, 2013, 7(51): 130.

 

日本では、関西中医鍼灸研究会の藤井正道先生が、まさに花粉症の治則として「温陽化湿、通絡・通陽」と「春の疏肝理気と通陽」「通陽で花粉症を治す」ことを2009年に提唱されています。中国の趙吉平先生や内蒙古中医学院などの弁証論治派と共通点の多い見解だと思われます。

 

2009年「花粉症 中医学的鍼灸からの多様な見方」
藤井正道, 『医道の日本』 68(11): 127-132, 2009.

 

もともと漢方の分野では日本の花粉症・アレルギー性鼻炎は非常に複雑な病態であることが1999年頃から議論されていました。寒熱が錯雑し、容易に転化することが論じられています。

1999年「季節性と通年性アレルギー性鼻炎の中医学的諸問題」
灰本元『中医臨床』 18(1): 18-24, 1997.

 

2008年に漢方の分野で灰本元先生と江部洋一郎先生がほぼ同時に「春の花粉症=陰虚」という弁証論治を発表しました。

 

2008年「アレルギー性鼻炎の新しい病態と治療法の提言 : 風寒熱湿から陰虚へ」
灰本 元『漢方の臨床』 55(3), 437-446, 2008-03-25

 

2008年「陰虚の春の花粉症」
江部 洋一郎『中医臨床』 29(1), 50-55, 2008-03

 

江部洋一郎先生は「冬に精を蔵するものは春に温病を病まず」というところから、春の陰虚陽亢・内熱・化風が目の痒みや目赤を引き起こし、脈は浮弦滑脈となると論じ、薄荷や菊花などで去風し、知母や石膏で清熱し、乾地黄などで滋陰する処方で著効を得ました。しかし、すぐに小高修司先生が『花粉症=陰虚の論を駁す』という論文を発表し、激しい議論となっています。

2008年『花粉症=陰虚の論を駁す』
小高 修司『漢方の臨床』 55(4), 611-614, 2008-04-25

 

おそらく臨床の対象となる患者の社会階層や地域性に基づく生活習慣などもあり、議論となっていると思われます。
花粉症やアレルギー性鼻炎の弁証論治を単純化するのは不可能だと思います。この議論のプロセスにこそ中国伝統医学の魅力があります。

 

 

 

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