【鍼灸EBM】てんかんの鍼の基礎研究

 

 

Acupuncture for Refractory Epilepsy: Role of Thalamus
「難治てんかんの鍼治療:視床の役割」
Shuping Chen et al.
Evid Based Complement Alternat Med. 2014; 2014: 950631.
Published online 2014 Dec 7. doi: 10.1155/2014/950631

以下、引用。

【難治性てんかんへの鍼穴の処方】
ツボは百会、腰奇、内関、ダン中、豊隆が普通に用いられる。

てんかんの強直間代発作は百会、鳩尾、腰奇、豊隆以外にも肝兪、陽陵泉、心兪がしばしば用いられる。

てんかん重積状態や不断の発作は命の危険がある。強い手技鍼刺激で複数の経絡を刺激する。百会、内関、豊隆、水溝、合谷、太衝、湧泉、間使、神門、関元、印堂、風池を発作がおさまるまで刺激する。

 

加えて、この分野では2012年に画期的な耳鍼による迷走神経刺激法が開発されました。

Auricular Acupuncture May Suppress Epileptic Seizures via Activating the Parasympathetic Nervous System: A Hypothesis Based on Innovative Methods
「耳鍼は、副交感神経システムを活性化させることで、テンカン発作を抑制するのかもしれない:仮説にもとづく画期的な方法」
Wei He, et al.
Evid Based Complement Alternat Med. 2012; 2012: 615476.
Published online 2012 Feb 1. doi: 10.1155/2012/615476

 

 

2013年4月3日テキサス大学医学部の論文
From Acupuncture to Interaction between δ-Opioid Receptors and Na+ Channels: A Potential Pathway to Inhibit Epileptic Hyperexcitability
「鍼によるデルタ・オピオイド受容体とナトリウムチャンネルの間のインタラクション:テンカンの過興奮を抑制する経路」
Dongman Chao et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2013; 2013: 216016.
Published online 2013 Apr 3. doi: 10.1155/2013/216016

 

この論文は、鍼の抗てんかん作用についてもっとも納得できるものです。
以下、引用。

 

鍼は過興奮となった神経を阻害して正常化することを通じて抗てんかん作用を及ぼす。

鍼による抗てんかん効果はオピオイドシステムの活性化を含んでいる。

私たちは以前にデルタ・オピオイドシステムを通じて電気鍼は脳損傷への神経保護的役割を果たすことを示した。

デルタ・オピオイド・システム(DOR)の発現・活性化はナトリウム・チャネル活性を阻害し、低酸素または酸素正常状態のナトリウム・カリウムホメオスタシスに影響をおよぼす。

てんかん発作の間は細胞内と細胞外の間の電気ホメオスタシスは崩解しており、ナトリウムイオン・チャンネルはてんかんの低酸素・虚血性損傷のような神経学的損傷により起こる病理的変化をアップレギュレーションし、鍼はナトリウムチャネルの阻害をデルタオピオイド受容体を通じて行い、てんかん発作に影響を及ぼす。

 

 

2017年3月『ネーチャー』の『サイエンティフィックリポーツ』掲載
Long-term electrical stimulation at ear and electro-acupuncture at ST36-ST37 attenuated COX-2 in the CA1 of hippocampus in kainic acid-induced epileptic seizure rats
「カイニック酸によりテンカン発作を起こしたラットの耳鍼と足三里(ST36)ー上巨虚(ST37)の長期的な電気鍼刺激による海馬のCA1における『シクロオキシゲナーゼ2(COXー2)』の減少」
En-Tzu Liao et al.
Scientific Reportsvolume 7, Article number: 472 (2017)
doi:10.1038/s41598-017-00601-1

 

鍼はてんかんに一定の効果がありますが、その機序は脳における抗炎症作用であるという論文です。
以下、引用。

シクロオキシゲナーゼ2はてんかん発作後の炎症や神経過興奮で重要な役割を果たし、ダメージに早期炎症反応する炎症メディエーターである。

 

てんかん発作を起こしたラットに耳鍼と足三里ー上巨虚の電気鍼をして海馬の状態を調べたところ、鍼をしたラットではシクロオキシゲナーゼ2の減少がみられ、鍼は脳での抗炎症作用を通じて抗てんかん作用を持つのではないかという基礎研究です。

 

 

2014年コクラン・システマティックレビュー
「てんかんに対する鍼療法」
Acupuncture for epilepsy.
Cheuk DK, et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2014.

以下、引用。

著者の結論: 参考にできるRCTが少なく、異質性があり高いバイアスのリスクが認められた。
現時点のエビデンスではてんかんに対する鍼療法は支持されなかった。

 

この結論には賛成です。
現在の薬物療法は安価で7割のてんかん患者は完全にコントロールできています。
臨床的問題とは、残り3割の難治性の患者さんにどう対応できるかです。

また、てんかんの動物実験、基礎研究は、鍼灸がどのように脳の中で働いているかを垣間見せてくれます。

 

 

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